FC2ブログ

ペッタンコ星人

ペッタンコ星人の日記です

プロフィール

ペッタンコ星人

Author:ペッタンコ星人
東京都池田山
映画の予告篇を作ってます

FC2カウンター

カレンダー

08 | 2006/09 | 10
- - - - - 1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30

ブロとも申請フォーム

ブログ内検索

普通の価値はそこまで低下しているのか?小説「名もなき毒」 2006-09-07-Thu

名もなき毒/宮部みゆき
コピー~連続無差別殺人事件。あらゆる場所に「毒」は潜む。
34401214.jpg

☆ストーリー
どこにいたって、怖いものや汚いものには遭遇する。それが生きることだ。
財閥企業で社内報を編集する杉村三郎は、
トラブルを起こした女性アシスタントの身上調査のため、
私立探偵・北見のもとを訪れる。そこで出会ったのは、
連続無差別毒殺事件で祖父を亡くしたという女子高生だった(本の帯より)


いろんなレヴューを見ていると結構絶賛みたいですが、
私は微妙でした。なんだか後味悪いんですよ、最近の彼女の作品は。

たとえば「模倣犯」。
コピー「まやかしの希望は、絶望より邪悪である」
20060907044748.jpg

☆ストーリー
公園のゴミ箱から発見された女性の右腕、
それは史上最悪の犯罪者によって仕組まれた連続女性殺人事件のプロローグだった。
比類なき知能犯に挑む、第一発見者の少年と、孫娘を殺された老人。
そして被害者宅やテレビの生放送に向け、不適な挑発を続ける犯人――。
が、やがて事態は急転直下、交通事故死した男の自宅から、
「殺人の記録」が発見される、事件は解決するかに見えたが、そこに、
一連の凶行の真相を大胆に予想する人物が現れる。
死んだ男の正体は? 少年と老人が辿り着いた意外な結末とは?
宮部みゆきが“犯罪の世紀”に放つ、渾身の最長編現代ミステリー。


新刊で出た当時、会社で流行して私自身もかなり夢中で読んだのですが
読み終わった後、一体何故こんな誰にでも真似できそうな残酷な犯罪小説を
「模倣犯」という題名で世に出したのか不思議でなりませんでした。
これじゃ小説「模倣犯」の真似をする模倣犯が出てきてしまうだけなんじゃないかと。
作者はこの本を「模倣した」事件が起こらぬよう警鐘を鳴らしたかったのかもしれませんが
警鐘を鳴らすならもっとしっかり完結して欲しかった。
「俺は模倣犯なんかじゃない!」それがこの異常に長い残酷な物語の結末なのか?
そりゃないさ!書き逃げだ!ここまで付き合ったんだから答えを教えてくれ!
いや、答えなんかいらない。せめて希望が欲しかった。正義でもいい。
結局、幹の太さが損なわれているとまでは思わないけど、
枝葉が大きすぎて幹が見えなくなってしまい最後に失速、そんな作品でした。

因みに会社の先輩は「こんな話を考える宮部みゆきが嫌いだ」と言っていました。
(宮部ファンの方ごめんなさい。私は模倣犯が出るまで彼女の大ファンだったのです)

で、「名もなき~」に戻るわけなんですが、これは「誰か」という作品の続編。
またまたそれが分からない。「誰か」がシリーズ化されるような作品なのか?

「誰か」宮部みゆき著
20060907044929.jpg

☆ストーリー
今多コンツェルンの広報室に勤める杉村三郎は、
義父でありコンツェルンの会長でもある今多義親からある依頼を受けた。
それは、会長の専属運転手だった梶田信夫の娘たちが、
父についての本を書きたいらしいから、相談にのってほしいというものだった。
梶田は、石川町のマンション前で自転車に撥ねられ、頭を強く打って亡くなった。
犯人はまだ捕まっていない。依頼を受けて、梶田の過去を辿りはじめた杉村が知った事実とは…。

まずあの「財閥企業で社内報を編集する杉村三郎」がシリーズものの主人公でいいのか?
直木賞を受賞した東野圭吾「容疑者X~」のガリレオさんもキャラが薄いなーと思ってましたが
杉村さんはそれ以下っすよ。まるで踊るシリーズでなぜか主役に踊り出てしまった
ユースケサンタマリアのような薄味な男。物語をひっぱるのには弱すぎるんじゃないでしょうか。

薄味なユースケさん。うどんも薄味??
yusuke.jpg

で、話は今度こそ「名もなき~」に戻るわけなんですが、
まず、原田いずみという解雇された女子アルバイトのキャラが化け物じみている。
それはそれは今までの宮部ワールドの悪役の中に入れてもピースが霞んでしまうほどの化け物。

本文より
原田いずみが採用されて、二ヶ月ほどたってから、彼女の態度が少しずつ変わり始めた。
ミスを指摘すると、以前はすぐ謝って直していたのに言い返すようになった。
手の込んだ言い訳を並べるようもななった。
やがて、それを通り越して攻撃的になってきた。
「最初はこうやれって言ったじゃないですか。だからそのとおりにしたのに」
「私のミスじゃないですよ」「そんなの、聞いてません」
「どうしてわたしばっかりのせいにするんですか?」
「私がアルバイトだからですか?そんなの不公平です」


そのうち原田いずみは無断欠勤を繰り返すようになり、
会社側がやむおえず電話でアルバイト契約の解除を告げると
1時間もしないうちに会社に乗り込んできて、女性編集長に灰皿を投げつける。
更には「どうして誰も私に謝りに来ないんだ。悪いのはそっちじゃないか!」
「電話一本でいきなりクビなんて契約違反だ!」などと興奮状態でまくし立て
更には会社の会長宛に抗議文を送り
「私は社員たちから様々な虐めを受けていた。性的いやがらせも受けた!訴えてやる!」
とかいうとんでもない嘘八百を並べまくるのである!!こえ~!

このとんでもない化け物女の物語と連続毒物混入殺人事件が「毒」というポイントで
つながっているのはいうまでもありません。
そして何よりも恐ろしいのは作者が投げかける「普通」の定義。
「普通はそんな事しないよね」とかで使う「普通」の価値が低下しているという事。

本文より

探偵「普通というのはどういう人間です?」
主役「私やあなたが普通の人間じゃないですか」
探偵「違います」
主役「じゃあ優秀な人間だとでも?」
探偵「立派な人間と言いましょうよ。こんなにも複雑で面倒な世の中を
    他人様に迷惑かけることもなく、時には人に親切にしたり、
    一緒に暮らしている人を喜ばせたり、
    小さくても世の中の役に立つことをしたりして、まっとうに生き抜いているんですからね、
    立派ですよ。そう思いませんか?」
主役「私に言わせればそれこそが”普通”です」
探偵「今は違うんです。それだけのことが出来るなら、立派なんですよ。
  ”普通”というのは、今のこの世の中では”生きにくく、他を生かしにくい”と同義語なんです。
  ”何もない”という意味でもある。つまらなくて退屈で、空虚だということです」

多分作者は今回、この言葉がいいたくて、この物語を書いたのではないかと思いました。
でも、「普通」の価値って本当にそこまで低下しているんでしょうか。

本文より
「子供たちに”正義なんてものはこの世にない”と思わせてはいけない。
それが大人の役目だ」

本当に声を大にして訴えて欲しいのはこの部分なのになぁって思いました。
最近の世の中はおかしい、間違ってる、そんな事は分かってます。
だからこそ間違えを正そう、無理かもしれないけど、正そうという気持ちは諦めずに持ち続けよう。
そんなメッセージが聞こえてくるような小説が読みたい。偽善でもなんでもいい。
こんな世の中を認めてしまうなんて、それじゃ希望も何もないじゃないですか。

という事でイヤ~な気分で本を閉じ、心機一転で東野さんの新作「赤い指」を読み始めたら
これがまたとんでもないお話。
20060907045345.jpg

引きこもりがちな中学生男子が幼女に悪戯しようと自宅へ連れ込み、
騒がれたのでクビを閉めて殺してしまう(もうこういうの聞き飽きました)
更にそれを知った親は息子を守るために幼女の死体を近くの公園の男子便所に捨て・・・

・・・もう「普通」の価値は落ちる一方です。
自分の子供が人を殺したのに、それを庇う。信じられません。
「分かる気がする」なんてとてもじゃないけど思えない。この先の展開を考えると気が重いですが
名物男、加賀刑事がなんとかしてくれると信じています。

CATEGORY : 小説のこと。 Trackback 0 Comment 10 △Page Top

« 前のページ | ホーム |